最新刊
「前書き」より 友人たちにこの本を書くつもりだと伝えると、ほとんど全員が「医師仲間から恨まれるよ」と反対しました。しかし、私の原稿を読んだ医師は誰もが皆、これは出版すべきだと言ったのです。 ここでの議論の中心にあるのは、医療を企業的なものではなく、1人ひとりの患者に丁寧に対応するものにしようと急激に広がる医師たちの活動です。秘密にすることを拒否し、全ての選択肢、リスク、医療ミスについて透明性を確保すべしと主張します。 直近の数年間で医療品質を評価する専門家によって、個々の病院で患者がどれだけ健康を回復しているかを評価する、公正で簡潔な手法が定式化されています。町や市で突出して良い病院、突出して悪い病院が分かるのです。 では、なぜ一般の人はこの情報を入手できないのでしょうか。それは、大きな力が働いて、そう出来ないようにしているからです。 医師としてのトレーニング期間を修了して何年もしてからですが、全国外科医会議で私の大好きな公衆衛生学教授の1人であるハーバード大学の外科医ルシアン・リープ博士に出会いました。博士は会議の基調講演での冒頭、何千人もの聴衆を見渡して、「危なくて医療をやらせてはいけないと思える医師が自分の同僚の中にもいると思う人は手を挙げてください」と発言しました。 すると、全員が手を挙げたのです。 この反応が信じられず、私は会議などで話をするたびに常に同じ質問をするのが習慣となりました。しかし、返ってくる反応はいつも同じでした。 医師は害を与えないことを誓います。しかし、仕事を始めるとすぐに別の暗黙のルールを身に付けることとなります。同僚による医療ミスを大目に見るというルールです。医師は一般的には善意の持ち主であり、自制心があり、よく訓練されています。しかし、こうして医師は社会に順応していくのです。 同じ診療行為について病院ごとの治療成績が明確になれば、成績の良い病院は報われ、悪い病院もそれが明確となることで改善が推し進められるなど、自由市場の力が活用されるのです。透明性を通じて、病院に説明責任を持たせ、医療活動をより誠実なものにする力を消費者は発揮することが出来るのです。 この本を書いた私を裏切り者と呼ぶ医師1人に対して、私に感謝の意を伝えてくれた医師はその5倍いました。だから透明性の時代がやって来ていると私は信じています。
この著者の作品1
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