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政治哲学講義 悪さ加減をどう選ぶか
(2025/04/22)正しさとは何かを探究してきた政治哲学。向き合う現実の世界は進むも退くも地獄、「よりマシな悪」を選んでなんぼの側面をもつ。 命の重さに違いはあるのか。汚い手段は許されるか。大義のために家族や友情を犠牲にできるか。 本書はサンデルの正義論やトロッコ問題のような思考実験に加え、小説や戯曲の名場面を道しるべに、「正しさ」ではなく「悪さ」というネガから政治哲学へいざなう。混迷の時代に灯火をともす一書。 【目次】 はじめに 正義論に残された問い 作品で読み解く 第1章 「悪さ加減の選択」ーービリー・バッドの運命 1 選択のジレンマ性 ジレンマとは何か 損失の不可避性 損失の不可逆性 2 政治のジレンマ性 政治とは何か 公共の利益 利害の対立 3 マシな悪の倫理 マシな悪とは何か 三つの特徴 行為と結果の組み合わせ 4 まとめーー政治の悲劇性 第2章 国家と個人ーーアンティゴネーとクレオーンの対立 1 偏向的観点と不偏的観点 偏向的観点 不偏的観点 2 不偏的観点と政治 法の下の平等 具体例1 政治腐敗 具体例2 国連活動 3 不偏的観点と個人 インテグリティと政治 国家と個人・再考 4 まとめーークレオーンの苦悩と悲嘆 第3章 多数と少数ーー邸宅の火事でフェヌロンを救う理由 1 数の問題 規範理論1 功利主義 特徴1 総和主義 特徴2 帰結主義 2 総和主義の是非 人格の別個性 権利論 権利は絶対的か 3 帰結主義の是非 規範理論2 義務論 マシな悪の倫理・再考 義務論的制約 4 まとめーーゴドウィンの変化 第4章 無危害と善行ーーハイジャック機を違法に撃墜する 1 トロリーの思考実験 具体例ドイツ航空安全法 「問題」前史 2 消極的義務と積極的義務 義務の対照性 優先テーゼ 3 トロリー問題 「問題」の発見 手段原理 航空安全法判決 4 まとめーー制約をあえて乗り越える 第5章 目的と手段ーーサルトルと「汚れた手」の問題 1 汚れた手という問題 理解1マキァヴェリの場合 理解2 ウォルツァーの場合 2 いつ手は汚れるか 印としての罪悪感 罪の内実 3 いつ手を汚すか 指針1絶対主義 指針2 規則功利主義 指針3 閾値義務論 制度化の問題 4 まとめーーサルトルと現実政治 第6章 自国と世界ーージェリビー夫人の望遠鏡的博愛 1 一般義務と特別義務 不偏的観点・再考 偏向的観点・再考 偏向テーゼ 2 特別義務の理由 理由1道具的議論 理由2 制度的議論 理由3 関係的議論 3 特別義務の限界 不偏テーゼ 消極的義務・再考 積極的義務・再考 4 まとめーー慈悲は家からはじまり…… 第7章 戦争と犠牲ーーローン・サバイバーの葛藤 1 民間人と戦闘員 民間人の保護 戦闘員の保護 2 民間人への付随的損害 二重結果説 民間人か自国民か 具体例 ガザ紛争 3 民間人への意図的加害 個人が陥る緊急事態 国家が陥る緊急事態 偏向的観点・再再考 4 まとめーー戦闘員の信念と部族の決意 第8章 選択と責任ーーカミュが描く「正義の人びと」 1 選択を引き受ける 規範理論3 徳倫理学 インテグリティと政治・再考 心情倫理と責任倫理 2 責任を引き受ける 指針1メルロ=ポンティの場合 指針2 カミュの場合 3 「悪さ加減の選択」と私たち 民主的な汚れた手 責任を政治的に引き受ける 具体例 アルジェリア問題 4 まとめーーサルトル=カミュ論争 終 章 政治哲学の行方 AIと「悪さ加減の選択」 AI時代の政治哲学 あとがき 読書・作品案内 引用・参考文献