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それいゆ文庫 花街の萬屋 あやかし奇譚 弐 〜肉吸う掛け軸〜
(2024/08/01)枯れちまった。昨夜生け直した花も、朝一番で生け直した花も、大座敷の床の間の花がみんな枯れちまった。なぜ、ここだけ……? 封妖の国随一の花街・湯ノ都。軒行燈や辻行燈に煌々と照らされた大通りでは、櫛屋の花魁道中が執り行われていた。花魁は、初櫛。雛櫛亡きあと、あやかし猫の白花に懐かれてからというもの、運気が上がったと評判である。久方ぶりの花魁道中とあって人垣ができるほどの賑わいに、警護を頼まれた萬屋の青藍と蘇芳は、なにか変わったことはないかと、目を光らせていた。そんな中、琴菊屋に出入りしている花屋が、二人を見つけて相談事を持ち込んだ。座敷の花を任されるようになったものの、生けても長持ちしない、生けても生けても枯れてしまうというのである。見世から手抜きと決めつけられ、どうにかこの不名誉を晴らしたい……。さっそく検分する青藍と蘇芳。彼らの姿を見つけて、夕霧もふわりと降りてきた。琴菊屋の他の部屋の花は鮮やかで美しいままなのに、この座敷の床の間の花だけが、なぜ? そして座敷に足を踏み入れた蘇芳は、床の間から白い着物の女が立ってこちらを見つめる気配に身体を強ばらせた。床の間に掛けられた「傾国の美人画」と同じ女の正体は……? 幻想時代怪異譚、第二幕!
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