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無意味なものと不気味なもの
(2024/05/22)「あれはいったい何だったのだろうーー?」 過去の人生において遭遇した、明確な恐怖とは言いがたい、けれど忘れることのできない記憶や小説。 大ヒット作『恐怖の正体』(中公新書)で話題を呼んだ作家・精神科医である著者が、精神の根源に触れるそうした〈恐怖寸前〉の〈無意味で不気味なものたち〉に惹かれて渉猟した、異色の文学エッセイにして読書案内。 刊行以来、ホラーや幻想文学の実作者を中心に、多くの読者から絶賛を得てきた名著に、書き下ろしの新章を増補した新版。 誰もが体験しながら、ふだんの日常においては意識の底に沈められがちな〈あれ〉を求めて……読めばきっと、あなたも語りたくなる。 推薦・澤村伊智 解説・朝宮運河 【目次】 文庫版のためのまえがき まえがき 1 隠蔽された顔ーーN・ホーソーン『牧師の黒のベール』 2 本物そっくりーー河野多惠子『半所有者』 3 糞と翼ーーパトリック・マグラア『長靴の物語』 4 姿勢と連想ーー古井由吉『仁摩』 5 受話器を握る怪物ーーH・P・ラヴクラフト『ランドルフ・カーターの陳述』 6 孤独な日々ーー日影丈吉『旅は道づれ』 7 南洋の郵便配達夫ーーJ・M・スコット『人魚とビスケット』 8 描きかけの風景画ーー藤枝静男『風景小説』 9 墜落する人ーーレイ・ブラッドベリ『目かくし運転』 10 救われたい気持ちーー高井有一『夜の音』 11 果てしない日々ーークレイ・レイノルズ『消えた娘』 12 世界の構造ーー富岡多惠子『遠い空』 13 グロテスク考ーーカースン・マッカラーズ『黄金の眼に映るもの』 14 うふふ。ーー車谷長吉『忌中』 16 昆虫的ーー内田百間『殺生』+ブルーノ・シュルツ『父の最後の逃亡』 16 入り込んでくる人ーー庄野潤三『黒い牧師』 あとがき 解説 朝宮運河 〈本書は、無意味なものと不気味なものにまつわる探求報告であり、「あれはいったい何だったのだろう」という呟きの執拗な反復である。もし読者諸氏にも「あれはいったい何だったのだろう」との文言が病原菌のように感染すれば、著者としては嬉しい。寂しさがまぎれ、この世界に生を営んでいくことの不安を、幾分なりとも忘れさせてくれそうだからである。……〉(「まえがき」より)