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白い蛙の悲鳴
(2018/09/10)鹿児島市にある南国日日新聞本社。踊橋健一(おどりはしけんいち=通称オドケン)は入社5年目、29歳の文化部記者だ。 踊橋はデスクから毎夏恒例の終戦企画を書くよう命じられる。今年百歳になる、地元文壇の長老、五条恒夫がソ連抑留時に同僚兵の肉を食べた疑いがあるので聞き出せ、というのだ。 取材はうまくいかず、踊橋は、企画の狙いをベテラン小説家の古河星子(77歳)に変更しようと考える。星子は子供のときに満州から引き揚げた体験をずっと小説のテーマにして書き続けてきた。 踊橋と星子は、福岡の二日市(ふつかいち)保養所跡で毎年開かれている水子供養に行く。博多港は日本最大の引揚港で、引き揚げの途中でソ連兵や中国人、朝鮮人にレイプされた日本人女性の窮状を見かねた人たちが立ち上がり、妊娠中絶手術を行なったのが二日市保養所だった。星子は手術を受けた中に鹿児島の女性がいたと聞き、生きていれば話を聞いて作品にしたいという。 踊橋がその次第を記事に書いた日、古河星子は殺される。 星子の娘婿、相沢雅雄が容疑者として浮かぶ。九電社員の雅雄は、反原発派の星子と長年対立していた。さらに最近多額の借金を抱え、星子がオーナーの喫茶店の立ち退き料を当てにして殺害したのではないかと警察から事情聴取を受け、逮捕は目前となっていた。 ところが、殺したのは……。オドケンがつきとめた真相は、敗戦時の闇と深く関わっていた。
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