
玉野井 芳郎
(3)最新刊
転換する経済学
(2021/06/11)※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 最近数年間、学生諸君や若い研究者諸君に向けて書いたり語ったりしたいくつかの文章を一つの書物にまとめてみた。したがって本書は専門書ではない。だからといって、たんなる教務書でもない。たまたま私のこの本がそうだというだけでなく、今日という時代は教養と専門の区別すら問うことのできなくなっている転換の時代だといってよいのである。その背景には、多くの人が気づきはじめているように、一八世紀以降の近代文明の空前の危機が横たわっている。学生諸君や若い研究者諸君は、知的好奇心のおもむくままにあらゆるものを読み、そして考え、思想における知的貪婪をきわめるとよい。本書が諸君のこのような期待になにほどか応えるだけの内容をもっているとはけっしていえないが、経済学への諸君の関心がこの拙ない書物によって多少とも高まるようなことでもあれば、本書の目的はそれで達成されるものと考えたいのである。 私が前著『マルクス経済学と近代経済学』(一九六六年)を書き終えてから、今日までにもう十年もたってしまった。その間、大学紛争と環境破壊が未曾有の社会問題となってゆくなかで、前著での到逹点からさらに前進してゆくうえに多くを学んだのは、シュムペーター、ボールディング、およびボランニーのユニークな諸体系であった。私はこの三人の思想家がさしのばした個性的な導きの糸をたぐりよせながら、その都度私の考えを書いたり語ったりしてきた。本書は、そうした彷徨と模索についての覚え書き以上のなにものでもないのである。 本書の副題として「科学の統合化を求めて」を付した。右の三人の思想家は、どれも周知のとおり統合の頭脳の持主である。したがって本書の各章においても、学問的統合という問題意識が随所に折りこまれている。(「はしがき」より) 目次 はしがき 序ーー論争・学問・大学ーー 1 人間シュムペーター 2 シュムペーター体系とドイッ歴史学派 3 メンガー対シュモラーの方法論争 1 方法論争の経緯と争点 2 カール・メンガーとその貨幣起源論 4 現代経済学とパラダイムの転換 5 「見えざる手」から「見える手」へ 6 広義の経済学をめざして 1 ポランニーの経済学 2 ボールディングが示唆するもの 3 工業化社会の変容について 7 科学の階層構造と経済理論