
藤井正雄
(9)最新刊
日本人の“ご利益”信仰
(2025/03/17)日本人の心の中に眠っている“信仰心”を再発見する! 全国の神社仏閣で手を合わせる日本人。 初詣では「一年の安寧」「家内安全」「商売繁盛」を祈念し、受験シーズンには「合格祈念」。 古来から親しんできた素朴な“祈り”とは? まえがき 毎年、お正月には、初詣でをする人びとで全国の神社仏閣が、あたかもお祭り騒ぎのようなにぎわいを見せ、その数は、日本人の二人に一人の割合だとまで言われています。また、入学試験のシーズンともなれば、絵馬やお札に祈りをこめて“合格祈願”をする受験生たちの姿も見られるようになります。 人びとが参る神社仏閣には、“合格祈願”の北野天満宮や湯島天神、“商売繁盛”の銭洗弁天、“安産・子育祈願”の雑司ヶ谷鬼子母神などがあり、まさに、日本人は、今も昔も神や仏に支えられて生きているといった感さえあります。 確かに、日本の歴史をふり返ってみても、神道は祭りを通して、日本人の民族意識を一つにまとめあげる重要な役割を果たし、また、仏教も、先祖の霊を祀る仏壇を中心にして、「家」の考え方を維持する役割を果たしてきました。 ドイツの宗教社会学者・ルックマンの言葉を借りれば、神や仏は「見えない宗教」となって、日本人一人ひとりのパーソナルティの中に眠っており、私たちの血となり肉となって、心の奥底に生き続けているということになります。私たちは不幸に見舞われたり、危機的な状況に追い込まれたとき、我知らず心の中で神仏に手を合わせ、神社仏閣に詣でて神主やお坊さんに祈願や祈祷を頼み、憂き身をやつしたりします。これは、それまで心の底に眠っていた「見えない宗教」が、「目に見える宗教」となって現われ出たものと見ることができます。まさに、この「目に見える宗教」こそ、日本人にとっての“神さま・仏さま・ご利益さま”ということになるでしょう。