武田信子
(5)最新刊
不適切な関わりを予防する 教室「安全基地」化計画
(2023/08/30)専門家と考える「教室マルトリートメント」の処方箋 本書の概要 1「やりすぎ教育と教室マルトリートメント」(武田信子)、2「学校現場の〈叱る依存〉と教室マルトリートメント」(村中直人)、3「子どもの心理的危機対応とは何か」(荻上チキ)の三つのテーマから考える、不適切な指導への予防策。累計750名の教育関係者を動員したオンラインセミナー待望の書籍化! 本書からわかること 子どもの育ちに必要なものとは? 「安全基地」とは場所のことではなく、人の役割や働きかけのことを指し、発達心理学の用語です。かつて、子どもの育ちと愛着の関係に着目した心理学者・ボウルビィは、「子どもたちが順調に穏やかに育つためには、安全と探索が必要だ」と述べ、その土台として「アタッチメント」の形成が不可欠であると説明しました。アタッチメントは、日本では「愛着」と訳されていますが、本来の意味は「接続・装着・連結・取り付け」です。 教室を「安心と信頼」で溢れる場所にするには? 人が主体的に行動しようとする際には、喜んでその背中を送り出してくれるような空港の滑走路のような役割を果たし、何かあったときに戻って来ることができる、安心感のある場所が必要です。離れていてもお互いのことを思い、何かあったときには戻って安心感をもたらすことができる存在。後年、心理学者メアリー・エインズワースによって、この役割をもった大人の存在が「安全基地(Secure Base)」と名付けられました。本書は、教室を子どもたちの「安全基地」にしていくことを目指した1冊です。 あらためて「教室マルトリートメント(不適切な指導)」とは? 「教室マルトリートメント」とは、編著者である川上康則先生による造語です。教室内で行われる指導のうち、体罰やわいせつ行為のような違法行為として認識されたものではないけれども、日常的によく見かけがちで、子どもたちの心を知らず知らずのうちに傷つけているような「適切ではない指導」を取り上げています。例えば、事情を踏まえない頭ごなしの叱責、子どもたちを萎縮させるほどの威圧的・高圧的な指導などは分かりやすい例です。 教育界の構造的な問題とは? 2022年4月に刊行した『教室マルトリートメント』は、これまでグレーゾーンとされてきた教師の不適切な関わりを、単に教師個人の資質や能力の問題として捉えるのではなく、むしろ誰もが陥る可能性があり、かつ教育界の構造的な問題に端を発している課題と考えるべきではないかと指摘し、教師や保護者の皆さまから大きな反響が寄せられました。それらの共感の声から後押しを受けて開催した刊行記念イベントを書籍化したのが、本書『不適切な関わりを予防する 教室「安全基地」化計画』です。 適切な関わりのために手に入れたい新たな発想や概念とは? 共著者として、臨床心理士で一般社団法人ジェイス代表の武田信子さん、臨床心理士で公認心理師そして『〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)の著者である村中直人さん、評論家でNPO法人ストップ!いじめナビ代表の荻上チキさんという各論者から、社会システムから問い直す/ニューロダイバーシティを知る/権力勾配を緩やかにする/学校ストレスを言語化する……等、多くの視点が提案されています。また、「マイクロアグレッション(小さな攻撃)」の概念や、「子どもの権利条約」に関する知識などを丁寧に整理するのに加え、教室マルトリートメントを防ぐための読書案内も収録し、豊富な情報提供となるように心がけました。 こんな先生におすすめ ・威圧的な指導や子どもに試練を課すような指導の在り方に違和感を抱いている先生 ・子どもたちの安心と信頼で溢れる教室を目指す先生 ・2学期からの学級経営を見直したい先生